新しい演劇のつくり方(第4期)第6回

耳を傾け合い、観合うということ
GAKUが2020年より開講している演劇のクラス「新しい演劇のつくり方」。これまで3期の開講を通じて、多様な演劇の作り手の方々を講師に迎え、経験を問わず様々な10代が集まる機会を大切にしながら、まさに「新しい演劇のつくり方」を探求していきました。今期は講師に今野裕一郎さん(映画監督、演出家、「バストリオ」主宰)を迎えています。
11月29日(土)、今回はこれまでの授業をふまえた発表。全5組のうち2組が発表を行い、観合うということも意識していきます。一人ひとりが大切にしているものを見出し、それを大切にしあうことを、大切にする。そうしているうちに、「演劇」ができていく。そのようなプロセスの一端を感じる時間でした。





「散歩」から立ち上がっていくもの
例えば、2人が向かい合って会話をし続ける発表。結論づけるよりも、話題が「散歩」のように転じながら広がっていきます。そして、そのうちの一人は、話に耳を傾けながらクロッキー帳に相手のポートレートを描き続けます。そして、会話の一端の終わりを感じる際に、そのスケッチが完成。話に必ず結論をつけてしまうクセに気がついて、そうではない話し方を模索しているなかで生まれたそうです。
例えば、ホワイトボードに六本木のビル群を描くところから始まる発表。その前で靴を磨く、傘を直す、服の穴を縫う、ケータイを充電する、歯を磨くなど、次の日を迎えるために淡々と準備を進めていきます。それは、割れた窓にテープを貼って暮らすアパートの一室に目が止まり、そこに「人間の生きる気」を感じたという、六本木での「散歩」での体験が起点になっているそうです。
発表を終えた後は、観ている生徒の皆さんで感想を寄せていきます。一人の感想が起点になり、さらに感想が連なっていく。同じ時間や場所を共有する体験の中で、異なる着眼を持ち寄る。このことは、これまでの授業での「散歩」にも通ずるようにも感じますし、それらに伴う「観る」という行為が創作をより豊かにしていくことにも改めて気付かされます。



大切なものを大切なままにしあえる場へ
自分が大切にしているもの。そもそも、その大切にしているものを、自分自身が見ようとできているか。「散歩」を通した授業ではそのような着眼があったように思います。そして、発表を通して、それを他者に手渡せるか。手渡そうとしているのかということが問われていきます。今野さんは、「握れているものが必ずある。その手をひらくことができるか」とも言います。つまり、「観客」という存在の大切さが説かれていきます。「観客をどのように意識するかで、自分から出る音も決まる。観客に対して開いているかどうかも、その音から伝わってくる」と今野さんが伝えるように、観客という他者を迎え入れながらひらかれる、大切なものを大切なままにしあえる場のあり方へと意識が向かっていきます。
今回の発表が3月に控える成果公演に目を向けていく機会にもなったよう。授業終盤には、生徒の皆さんからフライヤーや会場構成のアイディアもあがります。さまざまなクリエーションが交錯しながら、創作が進んでいきます。
【リフレクションノート】
このクラスでは、文章やイラストや写真など、形式を問わずに生徒の皆さんの持ち回りで順番にリフレクションノートを提供してもらっています。それぞれの生きてきた経験。授業に参加して味わった体験。その体験が終わったあとの体験。さまざまな経験と体験が連なりながら、このクラスが進んでいきます。
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