「新しい演劇のつくり方(第3期)」第1回 イントロダクション
「新しい演劇」をつくるために
GAKUによる演劇のクラス「新しい演劇のつくり方」。3期目となる今期は、昨年度に続いて本クラスの総合ディレクターを務める岡田利規さん(演劇作家、小説家で演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰)による『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』を原作に、中高生である生徒全員が新たな物語の戯曲を書き、演出し、演じ、発表していきます。全16回の授業を通して、舞台は六本木「Kant.」となります。
7月7日(日)の初回授業は、岡田さんによるイントロダクション。脚本パートの講師を務める西尾佳織さん(劇作家/演出家/「鳥公園」主宰)、演技・演出パートの講師を務める三浦直之さん(劇作家/演出家/「ロロ」主宰)も参加しながら、講師の皆さん、生徒の皆さん、それぞれの演劇観を語り合いながら、このクラスでこれからつくる「新しい演劇」をつくるための心構えを確認していきました。
一人ひとりの演劇観に触れる
年齢も演劇経験もバラバラな13名の中高生と3名の劇作家が集うこのクラス。岡田さんからの「皆さんが演劇に期待していることを知りたいです」という投げかけと共に、それぞれの自己紹介から授業が始まります。
「舞台の上なら自由になれる気がしている」「もっと自分の感情を表現したい」「自分だけを生きているのは勿体無い気がして、色々な役を通じて誰かを経験してみたい」「観てくれる人に感動でもなんでも変化を与えたい」「自分の言葉を聞いてほしい」「まだしたことのない体験に挑戦してみたい」など。演劇を通して実現したい、それぞれの想いが垣間見れます。
岡田さんが一人ひとりにさらに質問を投げかけると「すごくわかる」「それいいね」とほかの生徒も対話に自然と加わり、それぞれの演劇観に共感したり惹かれたり、気づけばおしゃべりのような時間に。誰かの演劇観に触れながら、自分の演劇観をさらに拡げていくような時間でした。
同時に講師の二人からも「演劇に期待すること」が語られます。「緊張しなくても伝えることができる場。安心して話していい場で安心しながら話を聞ける場」が「演劇に期待すること」だいう三浦さん。同様に「集う人それぞれが違うことを受け入れられる場」だと言う西尾さん。劇団を率いながら創作に臨むお二人。それぞれの個人的な体験も紐付けながら語られた二人の演劇観はこのクラスで目指すべき形のようにも感じられました。
新しい存在がそのままに生み出す、新しい演劇
今回の原作『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』について「作品をつくる時は意識しすぎないで欲しい」と言う岡田さん。「この原作はコンビニが舞台。一つの場所にどんな人が集うのかから考えてみるのもいいかもしれません」と、次回から始まる戯曲の執筆に向けて「舞台の設定」から考えることが提案されました。同時に戯曲を書いた当時のご自身の「コンビニ」に対する着眼も語られ、生徒の皆さんの想像も膨らんでいきます。
「戯曲を書くことはまず自分を掘る作業。その壁打ち相手になるつもりです」と西尾さん。「僕にとっての演出家像もどんどん変わる。答えは持っていないけど、皆さんと一緒につくっていきたいです」と三浦さん。「このクラスは、新しい演劇をつくるためのクラス。演劇はこうやってつくるものなんだよということを教える、みたいなクラスにはならないでしょう」「みなさんは新しい演劇を、新しさを意識することなしにつくり出すでしょう。なぜなら、みなさんが新しいからです」という岡田さんの発言に呼応するように、講師のお二人も言葉を重ねていき、これから本格的に始まるクラスが持っている姿勢が示されていきました。
次回からは戯曲の執筆がスタート
最後には生徒の提案で全員での集合写真も撮影し和やかな雰囲気で締めくくられた初回授業。次回の授業は戯曲づくりの第一歩。原作『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』の戯曲を生徒のみなさんが読んできた上で、それぞれの感想や考察を語り合いながら、新しい物語の種を探っていきます。
執筆:杉田聖司
写真:大貫桃加