関係美食論 6回 フィールドワーク

ビルのワンフロアで栽培から出荷まで
「関係美食論」の教室は、馬喰横山のミシュラン1つ星レストラン「nôl」。シェフ 丹野貴士さんをメイン講師に迎え、東京という都市で育まれた地元の食材や生産者との出会いを通じて、美食を関係から捉え、「一汁三菜定食」という料理に落とし込んでいきます。
第6回の授業ではフィールドワークを実施しました。今回訪れたのは、大田区で「東京 福しいたけ」を栽培する「KINOKO TOKYO」。生産地に訪れるのは3回目。実際の現場で、「関係美食」についての考察を深めていきました。



新しいかたちの農業に触れる
まずは、生産の現場を見学。ここでは、千葉県の菌床を用いてしいたけを栽培しています。部屋全体に並ぶ棚に、菌床がびっしりと置かれている様子に生徒の皆さんもびっくり。ビル内での栽培は珍しいそうで、湿度管理や空気の入れ替え、こまめな散水など工夫が施されています。しいたけの傘が開ききってしまう前の椎茸は、軸にも栄養がたくさん含まれており旨味が凝縮されているそうです。この話を聞き、しいたけを下から見上げ、どのしいたけが美味しそうかチェックする皆さん。
さらに、しいたけを3ターン収穫した後の菌床はリサイクルするというお話しも。菌床には栄養分が残っているため、それを畑の土壌改良材として利用することができたり、カブトムシの寝床として活用できます。これにより、廃棄物を減らすことが叶っているそうです。

はたらく環境も考慮されている生産地
さらに、「Kinoko Tokyo」が特徴的なのは、椎茸栽培が東京都指定の「就労継続支援B型」福祉事業として実施されているところです。それにより、障害や難病などにより一般企業での就労が難しい方が、安心できる環境の中で自分のペースを大切にしながらはたらくことができる生産地になっています。
ここでは、菌床の陳列、収穫、仕分け、梱包、ラベル貼り、販促用POPやチラシ作成など、一人一人の「やりたい」という気持ちや得意分野を大切にしながら仕事を選択していくそうです。収穫後販売する際は、一部のイベント販売などを除き福祉の文脈はあえて強調せずに「東京福しいたけ」という品名で出荷しています。そこには「美味しいしいたけを作っているプライドと自信があるので、チャリティのような気持ちで消費者に購入して欲しくない」という強い想いが込められています。


「関係」を捉え直す
フィールドワークの最後には、しいたけの収穫やパッケージングまで体験。初めての体験に少し緊張しつつ、様々な工程に挑戦しました。まさに、それぞれにさまざまな生きづらさを抱える方々が、椎茸の栽培や出荷作業において、お互いの「わくわく感」を大切にしていること。そして、それが商品の質にもつながっていくということ。関係美食における「関係」を改めて考え直す貴重な体験となりました。
執筆・撮影:松村ひなた